都内のビル屋上でサウナは作れる?!建築基準法との関係

住宅・商業施設などが建ち並ぶ東京都内ではビルの屋上活用事例が多いですが、最近はサウナを作るケースが増えています。
屋内施設より高い開放感と眺望を味わえる屋上サウナに、多くのユーザーと事業者が注目しています。
しかし都内のビル屋上は法規制や建物構造など多くの課題があり、空いているからといって勝手にサウナを作ることはできません。
今回は東京都内でビルの屋上にサウナを作る際の課題を一つずつ検証し、最後に結論をまとめてお伝えします。
コラムのポイント
・都内のビル屋上サウナは、消防法・都条例・建築基準法など多くの法令が関係します。
・ビル自体の排水構造や耐荷重なども重要な課題となります。
都市部で屋上活用サウナが増えている

元々土地の確保が難しい東京都内では、ビルの屋上を展望台や飲食店、アクティビティスペースなどに活用するケースが多いです。そんな中全国的なサウナブームが起こり、ビルの屋上にサウナを作る事例が増えています。
元々広い土地の確保が難しい都市部では、ビルイン型のサウナが主流でした。しかしビルイン型のサウナでは、屋外のととのいスペースをつくるのが難しいです。
その点ビルの屋上なら、郊外のサウナ施設のような開放感のある屋外のととのい空間を作ることができます。さらに屋上なら周囲からの視線などプライバシーの問題も解決しやすく、サウナとの相性は悪くありません。
しかし都市部の屋上建築は確認申請が必要になる可能性が高く、法規制が大きな課題となります。
さらに東京都内の場合は「東京都建築安全条例」で屋上広場に対する規定があり、10㎡以下の建築物でも確認申請が必須となっています。
東京23区は防火地域・準防火地域

東京の中でも特に建物密度が高い23区内はほぼ全域が防火地域・準防火地域のどちらかに指定されており、屋上サウナづくりにおいて大きなハードルとなります。
防火地域・準防火地域は、市街地で火災が発生した際被害を広げないことを目的とする建築制限がある地域のことです。建物の密度が高い都市部などを対象に、都市計画法に基づいて指定されます。
※防火地域の建築制限
延床面積100㎡以下 | 延床面積100㎡超 | |
3階建て以上 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
2階建て以下 | 耐火建築物または準耐火建築物 |
※準防火地域の建築制限
延床面積500㎡以下 | 延床面積500㎡超 1500㎡以下 | 延床面積1500㎡超 | |
4階建て以上 | 耐火建築物 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
3階建て | 耐火建築物または 準耐火建築物または一定の技術基準に適合 | 耐火建築物または 準耐火建築物 | |
1~2階建て | 木造建築は一定の防火措置が必要 |
防火地域・準防火地域どちらの場合でも、3階建て以上のビルではほとんど耐火建築物・準耐火建築物の制限が掛かります。
耐火建築物・準耐火建築物ともにコンクリートや金属などの難燃材で覆う必要があるため、木製のサウナ小屋などは建てることができません。
ビル屋上サウナは容積率も課題になる

ビルの屋上にサウナを作る場合、建築基準法の容積率も検証すべき課題です。
容積率とは
- 敷地面積に対する建築延べ床面積の割合のこと。
- 敷地面積200㎡、容積率80%の場合、延べ床面積の上限は160㎡となる。
そもそも地価が高い東京都内のビルは、土地を有効活用するため容積率の上限ギリギリで建てられている可能性が高いです。
どんなに小さなサウナ小屋でも屋根があれば建築物とみなされるため、容積率ギリギリのビルの屋上には建てることができません。仮に確認申請が無いビルだったとしても、勝手に建てると容積率オーバーとなり違法建築とみなされます。
屋上の設備と構造も検証すべき課題

ビルの屋上にサウナを設置する場合、排水や耐荷重といった建物の設備・構造面も課題となります。
業務用サウナでは清掃のため排水口の設置が義務付けられていますが、屋上の雨水と同じ経路に流すことはできません。元々活用されていない屋上には排水が用意されていないことが多いです。
また屋上の耐荷重は建築基準法で規定されていますが、サウナの重量に耐えられるようには設計されていない可能性が高いです。
屋上の耐荷重は1800N/㎡(1㎡あたり180キログラムまで耐えられる数字)と規定されています。しかし2~3人用のサウナ小屋やバレルサウナは数百キロの重量がある製品が多く、中に入る人も合わせると重量オーバーになる可能性が高いです。
排水や耐荷重は補強・改修で対応できる可能性もありますが、ビルオーナーの同意が得られなければ実現はできません。また仮に許可が取れたとしても、サウナづくり以外に多額の費用が掛かるため、かなりリスクは大きくなります。
結論:東京都内でビルの屋上にサウナは作れる?

結論としては、東京都内の屋上サウナはクリアすべき課題が多く、実現は難しいと考えられます。
- 耐火建築で作る
- 容積率に余裕がある
- 排水・耐荷重などビル構造が問題ない
上記の3点をクリアできれば、東京都内でも屋上サウナを作れる可能性はあります。ただし木製の小屋サウナやバレルサウナの外壁・屋根は、不燃材料ではないため実現は難しいでしょう。また小屋サウナはもちろん、バレルサウナも屋上につくる場合は建築物とみなされるため、容積率をクリアできない可能性が高いです。
仮に容積率をクリアできて耐火建築でサウナを作ろうとすると、今度は不燃材で重量が増加するため屋上構造の課題が大きくなります。また建築コストも増加してしまうため、ビジネスプランの実現そのものが難しくなってしまう可能性も高いです。
このように東京都内のビル屋上サウナは、不可能ではないもののかなりハードルは高いのが実情です。
ビル屋上×テントサウナは可能性あり

建築物としてサウナを屋上につくるのは難しいですが、テントサウナなら実現できる可能性が高いです。
移動や撤去が容易なテントサウナは建築物とみなされないため、建築基準法の対象となりません。また重量もそれほどないため、屋上の耐荷重が課題になることもないでしょう。実際に東京都内で営業している屋上サウナは、ほとんどテントタイプを採用しているようです。
ただしテントサウナであっても、事業として設置者以外の人に利用させる場合は公衆浴場法の対象となり、自治体の許可申請を受ける必要があります。
管轄の保健所・消防署によって判断が異なることもあるため、テントサウナだからと言って必ず許可が下りるとは限りません。勝手に設置すると法令違反となってしまうため、必ず事前相談・協議の上で正規の手続きを踏むべきです。
まとめ
東京都内のビル屋上は建築基準法・消防法などの法規制が多く、本格的な小屋サウナやバレルサウナを作るのは難しいです。
屋上サウナを実現できる可能性はゼロではありませんが、多くの手間や費用がかかるため、他のビジネスプランを検討したほうが成功する可能性は高くなるでしょう。
最近はサウナに対するユーザーニーズも多様化しているため、都内でも実現可能なプランを考えてみましょう。

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